前回の記事で、全く同じフレーズを弾いた場合に、頭重心とバックビート重心で出音にどんな違いがあるかについて、わかったつもりになって書いたが、今回はそもそもフレーズが違うという例をいくつか紹介したいと思う。
まずはMSGのInto the Arenaだ。
ギターでコピーした事のある人なら、あのウラ始点のリフはなかなか苦労した経験があるのではないだろうか?
私自身もちょっと気を抜いたら表返ってしまうので、逆に表拍を強く意識してコピーした記憶があるが、それがおそらくバックビートおじさんの言う誤拍裏打ち状態になっていたのかもしれない。今になって振り返ればそう思う。
ただアメリカ人ならそれが当たり前に(誤拍裏打ちにならずに)できるか?と問われれば少し疑問を感じる。
上記の曲ではわかりづらいが、Van HalenのHot for Teacherではもう少し顕著である。
この曲はイントロの6音シーケンスの最初の3連が4拍目スタートになってるのだが、これをカバーした有名LAメタルバンドは完全に表返っている。
今となっては大御所のあのバンドだ。当時から腕は確かである。
彼らの名誉のためにも名前は伏せておく。
フレーズがそもそも1拍ズレてるので、わかりやすい。
つまり、本来
こうなるところを、
こう弾いてしまってるわけだ。
テンポが速いのでわかりにくいかもしれないが、テンポを落として聴いてみてほしい。
原曲は4拍目から始まるので、まるでドラムパターンの方が裏返って聞こえるエディーのトリックフレーズである。
許し難い事に、市販のバンドスコアですら、後者のように表記されている物がある。
この曲はギターソロも特に後半はドラムパターンが裏返って聞こえる。
エディーは一説によると、アランホールズワースの曲をコピーしていて、指が届かないからライトハンドを思いついたと言われているように、元々ジャズやフュージョン系の音楽が好きだったのかもしれない。
他にも316なども4拍目の3連のウラ(3つ目)からスタートするリズムトリック曲だ。
というより、私を含む凡人にはリズムトリックに聞こえるのかもしれないが、エディーにはそれがむしろ普通で、そうとしか弾けなかった可能性すらある。
日本でVan Halenのギターカバーをしている有名YouTuberといえば”あの方”であるが、あの方はエディーとランディーローズを比較して、「絶対に1拍目に弾かないエディーと、1拍目から入るランディーローズ」と評している。
もちろんフレーズ構成が違うだけで、ランディーもリズムの重心はしっかりバックビートに置けてるのかもしれない。(Hot for TeacherのカバーをしたあのLAメタルバンドも)
私はこれまでフレーズに着目して聴いてきたので、残念ながらリズムのごく僅かな差異を聴き分けられる感性をまだ持ち合わせていない。
というわけで今回はフレーズに現れる重心の違いについて書いたが、エディー・ヴァン・ヘイレンの特異なリズム感に関しては、バックビートについて学ぶ前から書きたかったネタである。
バックビートおじさんが「4拍目を起点に4、1、2、3を一塊として考える(4を1としてカウントする)」って言ってるのを聞いて、こういう事だったのではないかととても腑に落ちたため、バックビートのテーマの中で書いてみた。
バックビート重心をマスターすれば、一番変わるのはむしろフレーズ(作曲やアドリブ)なのではないだろうか。
元々日本語訳は「弱起」なんだし。
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