徴税権の資産価値

経済




徴税権の資産価値

最近、Twitterにて、池戸万作さんと無税国家の可否に関する議論をしましたが、もう少し掘り下げて書きたいと思います。

債券というのは、バランスシートで言えば右側、負債サイドの勘定であり、左側の資産によって価値が裏付けられています。
資産がなければ返済能力がないので、そのような発行体が発行する債券には価値がありません。

この辺りは最近ではステーブルコインの発行体の資産が、発行されたコインの総額と1対1で対応しているかどうかがよく話題になるので、ピンとくる人も多いのではないでしょうか?

100億ドルのコインを発行しているステーブルコインが、70億ドルしか資産を繰り入れていないなら、そのコインの価値は70%しかありません。
資産が分子に、負債が分母になります。

通貨は国が発行する債券ですので、国の総資産がその価値を裏付けています。

では日本の資産を見てみましょう。
日本には400兆円ほどの対外純資産があります。
これは海外に対する負債を全て返済し終えてもなお、400兆円の資産が残る事を意味します。

ところでマネーストックはM3で1500兆円ほどあります。
マネーストックとは、言わば発行された通貨の総量なので、少なくともそれ以上の資産がなければ成り立たないのですが、大丈夫でしょうか?
全く問題ありません。
なぜなら日本には400兆円の有形資産の他に、徴税権という無形資産があるからです。

大金」を道端で見つけたら | mixiニュース

ではその徴税権の価値は、現在価値に換算していったいいくらになるでしょう?
今回は問題を単純化するために社会保険料などを含めずに計算します。

仮に毎年、無条件で60兆円もらえる権利というものがあれば、あなたはいくらで買いますか?
資金の調達を、年利0.5%と考えて計算してみてください。

(日本の税収は年間およそ60兆円程度で、国債の長期金利は0.5%以下です。)

これは高校数学で習う無限等比級数の和で求める事ができます。

すなわち
60兆円 + 60兆円x(1-0.5%) + 60兆円x{(1-0.5%)の2乗}+ 60兆円x{(1-0.5%)の3乗} + …

シグマを使って描き直せば、
Σ(n=0〜∞){60兆円x(0.995のn乗)}

となります。

計算すれば
60兆円 / (1-0.995) = 1京2000兆円
です。

つまり1京2000兆円より安いなら即購入するべきです。

逆算による検算をすればもう少しイメージしやすいでしょう。
1京2000兆円を年利0.5%の金利で調達すれば、年間の利払いは60兆円になるため、毎年入ってくる60兆円でペイできますね。

人に帰属する権利であれば、その人が亡くなったら終わりですが、国には寿命がありませんので、日本という国が存続する限り未来永劫60兆円の収入を受け取れる権利が続きます。

もちろん税収は毎年変動しますし、長期金利も今後上がる事が予想されます。
ところがここでの税収は名目値ですので、インフレ率が上がれば、それに伴って増加する事が想定できますし、それ以前に経済成長によって、本来は増える事が期待できるものです。

長期金利もインフレ率と連動しますので、インフレ率が上がれば、長期金利も上がるのですが、その際には税収も増加しているでしょう。

今回は税収が未来永劫60兆円で固定という、かなり大雑把な条件設定ではありますが、むしろかなり小さく見積もった数値だと伝われば今回の記事の目的は達成です。
実際には徴税権の価値というのは無限にも思えるほど大きなものなのです。

無税国家というのは、資産からその相当大きな権利をごっそり放棄する事を意味しますので、それが発表されれば、その瞬間に通貨の価値は大暴落するでしょう。

以前にも池戸万作さんに関する記事を書いている通り、私自身は池戸万作さんの主張する財政支出を増やす事には、基本的には賛成の立場です。
それは分母を増やす事に相当しますが、徴税権を放棄する事は、分子からかなり大きな部分を失う事になります。
それを補うために社会保険料等、名目を変えて税金に代わるものを徴収するのでは全く意味がありません。

徴税権に代わる通貨の価値の裏付けについて、考えがあるのであれば聞いてみたいです。

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